木 下  2025/01/22


 

  
  このところ暖かい日が続いている。正月三が日も良い天気だった。

  住んでいる界隈は内陸で、夏の暑さ、冬の寒さがより厳しいのが通常。

  暖かいのは嬉しいが、はて?どうしたことかとやや不安。

 

  日本のカトリック教会で、日曜以外に信徒が教会のミサ/礼拝を義務とされている祭日は、

  日本の社会事情を考慮して、1225日と11日のみ。

  然し家族ぐるみの信徒でない場合、主婦は元旦に教会に来るのはかなり困難なようだ。

 

  で、自由な高齢者である私は11日はミサに与り、ミニパーティで懇談。

  神父さんの人数が少なく、普段の日曜は教会を掛けもちされていて忙しいので、

  この日は神父さんとゆっくり話ができる良い機会であった。

 

  2日と3日は箱根駅伝をTV観戦しながら、年賀状を読み、久々の知人の消息を確かめた。

  かなりの方々が、今年で年賀状じまいする旨付記されていた。

  昨年に年賀状じまいとの通知を受け、こちらからの発状を見合わせたところ、

  案に相違して先方から賀状が来て、急いで返信をした一幕も。

 

  例年、年賀状をいただく方から今年は音沙汰がなく、もしかしたらご病気かな、と思っていたら

  「実は昨年10月に父が他界して、、」と1月中旬に娘さんから寒中見舞い/訃報通知を受け取った。

  その数日後「母が11月に他界して、、」との葉書も息子さんから頂いた。

 

  毎年、国立東京博物館の「干支で初詣」という催しに出かけていたが、今年は取りやめ、

  東京湾お台場の日本科学未来館の特別展「パリ・ノートルダム大聖堂展」に出かけた。

 

  パリ・ノートルダム大聖堂は2019415日の夜、火災発生し尖塔や屋根が焼失崩落し、翌日午前に

  鎮火した。比較社会文化学者でありバロック音楽の奏者でパリ在住の竹下節子氏のブログによれば~

  夕方まだ明るい時間に燃える大聖堂を背景に写真を撮る観光客、パリ大司教とロザリオを歌うグループ、

  自主的に祈る人々などで騒然、、、、、そして、竹下氏自身はパイプオルガンのことがとても気がかり

  だったそうだ。

  パリ市民や国民には大ショックで、マクロン大統領は直ちに早急に修復することを宣言、短期間で多額の  

  寄付金が集まった。

  その火災の状況や修復の過程、伝統的な匠の技と最新技術の融合、大聖堂の歴史や建築方法などを

  HistoPad(ヒストパッド)と呼ばれるタブレットを用い、3D画像、昔と今の時系列、360度の視野で

  見ることが出来る。

 

  撮影所のセットのような部屋に、23のスタンド(タイムポータルと呼ぶ)があり、貸与されたタブレットの

  カメラアイをタイムポータルに向けると、画像が読み込まれる。画面をスワイプ(スライド)したり自分の

  体を回すと360度、さまざまな角度で聖堂内部が観られ、時系列的に見ることもできるし、画面の中に

  さらに数か所、しるしがあって、そこをタップするとより詳しい新たな場面と説明文が現れる。

  ナポレオン・ボナパルトの戴冠式など360度回転してみると広い聖堂の臨場感がたっぷり味わえる。

  結構集中して1から23まで順次急いで見たが、情報量多く説明文を読むのにも時間がかかり、

  2時間半を要した。

 

  火事の原因は不明だが、作業員のたばこ説、電気系統の故障不具合説など挙げられている。

  5年半の歳月をかけて修復、昨年127日に再開記念式典が行われ、トランプ氏,ゼレンスキー氏も出席。

  修復費用は1120億円、寄付は150か国、34万の人/団体から1340億円集まった。

  余剰分は今後の維持管理/修復に充てられる。建物の所有はフランス国家だが、

  カトリック教会に使用権が認められている。

 

  いや、見ごたえがあった。そして疲れた。(案内パンフ写真添付)

 

  友人に勧められた小説、塩田武士著「存在のすべてを」を読んだ。

  図書館の希望者が多く随分待たされた。

  小6男児と4歳子供の同時誘拐事件、小6はまもなく発見保護されるが、

  4歳児は3年間行方不明で、3年後の7歳時に、祖父母の下に帰ってくる。

  空白の3年間。そして事件は未解決のまま30年経過。

  そして人気の写実画家が30年前に3年間の空白を持った被害者であることが

  週刊誌に暴露され、歳を重ねた記者の再調査が始まる。~というストーリー。

 

  警察、新聞記者、画廊、画家、絵画蒐集家が織りなす人間模様。

  本筋の誘拐事件もさることながら、画壇の裏事情の話に引き込まれた

  写実画家の画壇における立場、芸大教授の君臨と横暴、百貨店の絵画展示即売会、

  日本最大の公募美術展の裏事情、欠員の出た芸術院会員になるための熾烈な選挙運動、

  画家と画廊の関係、まあフィクション、小説であることは頭にあるが、

  著者は元新聞記者(神戸新聞)だし、それなりに取材して、実情を下敷きに、

  物語を作っていると思うので、画家ってとんでもなく大変と思ってしまう。

  小説では「民展」とあるが多分「日展」がモデル、10回入選してようやく会友に、

  2回特選を取って会員に、審査員を3回して評議員に、大臣賞や芸術院賞をとって

  芸術院会員候補に、、。事実かどうか調べて確認していないが、、。

  百貨店の展示即売会で絵が売れたら、取り分は百貨店40%、画廊40%、画家 20%らしい。

  芸術院会員は非常勤の国家公務員で終身年金が250万円/年、画料が上がり発言力も増す、と

  本作に書かれている。

 

  読み応えのある一冊だった。

 

  85歳になったが、まだ10年ぐらいは行けそうな気もするし、急病で一年以内に、というのも

  充分あり得る年齢とも思う。

  そんなことを考え、思いを巡らしていると、世の中の大きなできごとも、歴史書で年表を見ているようで、

  自分はその行間の市井で蠢いている群衆のひと粒のように感じて、ひとごとのような妙な気持ちになる。

 

  今年はどんな年になるのかな。

  トランプ大統領就任をはじめ、後世の人達の研究対象になる様々な事件が、

  歴史年表を埋めていくのでしょう。

 

 

  木下

  




 




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