MUZMUZ 15  木 下





2024年09月04日 初秋 

夏休みが終わり学校が始まった。
夏休みや学校とは縁のない高齢者の私も 夏休みが終わって 目が覚めたような妙な感じだ。
この夏、只々ぼんやりと非日常の様な雰囲気の中で 過ごしたせいかも知れない。

各地に被害をもたらした迷走の台風10号は 当地にはさほどの影響を与えず去って行った。

毎年のことながら 8月15日は特別な存在感を示す。
旧盆、終戦の日、カトリック教会では 聖母マリア被昇天の祭日、
フランシスコ・ザビエルが 1549年に日本に到着した日。
カトリック熊谷教会では、カプチン会(修道会)のインド出身の神父が
何人も主任司祭をつとめたが その時には、この日が
インド独立記念日であることも説教に加わった。

また8月15日0時23分から1時39分の空襲により熊谷市街地の74%が焼失した。
日本のポツダム宣言受諾、無条件降伏が見えている直前のタイミングで、
罪な事をするものだ。

ネットによると 8月15日の空襲は、山口県(岩国市、光市)、大阪府、秋田市の4か所の
軍事関連施設と 都市では群馬県伊勢崎市と埼玉県熊谷市の2か所だったとのことである。

昭和20年終戦時、私達15期生の面々は 6歳だったので当時の記憶はかなりあり、
B29の特徴ある爆音も 鮮明に記憶している。
この時期には特集などで 当時の記憶がまざまざと蘇る。

NHKでは15日の夜 「昔は俺と同い年だった田中さんとの友情」
~戦争ってほんまあったんやな、小6年生と81歳の友情~というドラマをやっていた。
田中さんは終戦時11歳、熊谷を空襲したB29が、基地に帰る途中で余剰爆弾処分の為、
落としていった爆弾で、住んでいた街の住民23人が死亡、
その23人の中に田中さんの両親と妹が含まれ、本人も左脚を負傷、

また兄も戦死して孤児となり、地元の人たちに助けられながら成長、
現在は地元神社の管理人をしている。
そして田中さん自身が通っていた小学校の
現在の6年生(11歳)の面々との交流が描かれ、戦時下の様子が語られる。
(原作の小説も読んだが、田中さんは 終戦時11歳は変わらないが、
物語は85歳の時点での設定で、筋も判りやすい。

放送時間の制限があるからだろう)
田中さんを演じた岸部一徳は とても味のある役者、相棒シリーズの警察庁官房長役、
ドクターxこと大門未知子の師匠で 医師派遣業のボス役ははまり役。
元タイガースのベイシストだったとはね。

人それぞれの終戦の日があるようだ。永年の知人でC商社の2年年長の方は、
あの時期に一生分のカボチャを食べたので、
もうかぼちゃはいっさい食べない、とこだわっているし、
客先で、10歳あまり年長の製粉会社の専務の方は、
8月15日はか ぼちゃしか食べないと仰っていた。

日本経済新聞の私の履歴書、一昨日から、鈴木忠志氏(演出家)の執筆で、
3回目の今日、空襲で焼夷弾をかいくぐって逃げる場面、
終戦直後の様子などが記されていた。1939年生まれだから同年配だ。

聖母の被昇天のミサは 午後7時からだが6時半からローソク行列を行った。
境内にある聖母像から聖堂までの行列だが、少し風があった。
神父様のローソクはガラス製の「ほや」があるので大丈夫だが、
私たちのローソクは まさに風前の灯で、消えた火をつけてあげたり、
つけて貰ったりを4~5回はやったろう。

まるで平和を願う私たちの希望の火が揺れ動いているようだったが、
繋がり助けあう 沢山の人の集団の力は 侮りがたいものがあるとも感じた。

7月に発券された新紙幣、ようやく千円札が2枚回ってきた。
津田梅子さんと渋沢栄一さんには まだお会いしていない。

千円札の裏は、葛飾北斎の「富嶽三十六景神奈川沖浪裏」、
海外では「グレートウエーブ」の名で有名らしい。
友人が、8月28日の産経新聞に この絵について面白い記事があるよと、
コピーをメールしてきた。

執筆者は長辻象平氏(科学ジャーナリスト)。 要点をまとめると
〇北斎はある遊び心をこの絵に込めており 3艘の船に注目。
〇船は左右4人づつ、8人の漕ぎ手の八丁櫓の「押送船」
 (おしょくりせん)で鮮魚運搬用の高速艇。大波と富士見物の船ではない。
〇舳先の向きからして、江戸湾口へ向かっており、
 湾口の三浦半島付近の海に 鰹を買い付けに行くところ。
〇押送船は夜明けに 日本橋の魚河岸を出発、
 三浦半島沖の漁場で 釣りたての鰹を漁師から買い付け、
 日本橋へと急ぎ、日が暮れ夜になると 北辰(北極星)に向かって力漕。
〇未明に日本橋に到着すると待ち構えていた鰹売りが盤台を担いで、
 掛け声を掛けながら江戸の街へ。

 「初鰹むかでのよふな船に乗り」、文化9年(1812年)旧暦3月末、1匹 3両、
 現代の12万円, 4月末になると値段が少し下がるので、庶民はそれを待つ。

〇波の筋模様と色彩は鰹の暗喩である。波を描いた紺と青と水色の縞模様は
 「鰹縞」と呼ばれる着物の意匠
〇遠景の富士山が被った雪の量で 初夏の時節を示している。
〇茶色がかった空の色は芥子味噌(からしみそ)の暗示。「梅に鶯かつほにはからしなり」
〇長辻氏独自の考察として、この絵は、初鰹の留守模様としている。
 留守模様とは主役を描かずに、関連する事物を配して、主役を表現する知的な画技。

たとえば、遠景に富士山を描き、手前の地面に笠と杖だけが置かれた「富士見西行」
いやいや面白いね。絵を見てもとてもここまでは。勉強になりました。

健診の結果が出た。特段の問題はないが、相変わらず貧血状態。
薬で治療するほどではないようなので 嫌いなレバをせっせと食べ、
鉄/葉酸のサプリを飲んでいるが、効果は出ていないようだ。
腎臓の機能も落ちているが、かかりつけ医は「歳の所為か」と。

残暑はあっても、もう暑さは峠を越えただろう。
今週は演劇を観て、ワイン会にも行こう。

木下



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