MUZMUZ 15  山本





ご無沙汰しました! 山本です。 2021/06/13

長―い間無沙汰でいたら、先日、安嶋さんからメールが届いていた。
「如何している? 元気でいるか?」 何と有り難いことか、こんなふうに言ってくれる人、
近頃めっきり少なくなった。ならば、何とか返信せねばならぬ。

それでも暫く返答を思案していたら電話があった。
引っ越してまだ落ち着かないでいるとか、PCがダメになったとか、
後ろ向きの応答を思い付くだけ並べ立てた。

安嶋さんは静かーにだまーって聞いてくれて、最後に「PCが治ったらでいいよ、
近況知らせてね!」この優しい言葉の後、やっと決意した。

サービス付き高齢者向け住宅(入居:2020年9月)での生活をエンジョーイしています。
今日はその一旦を思い付くまま、個人のプライベート情報ギリギリまで記してみます。

* 2021年5月15日、今朝も5時前に起き出す。
あーあ、またもや睡眠不足。0時頃就寝して2時間おきくらいに、肩から肘、腕、手首
そして5指の痺れと痛さで目が覚める。

主に右腕。薬を服用しているが効果は殆どない。整形外科に通って4年になる。
頸椎症性神経根症。頸椎の間隔が狭くなって神経が圧迫されているのだ。要するに神経痛。

* そう言えば高2の時、武宮校長授業の出欠点呼時、
「山本は肋間神経痛で休んでいる」旨の報告を誰かがしてくれたのだが(多分、清水君だと思う。何故なら、毎朝一緒に垂水から通学していたから)、
“神経痛”と聞いて皆が大笑いしたという話を、後になって聞いた。
神経痛に悩まされている今、懐かしく思い出している。
  
* 夜が明けるのが早くなった。5時30分、ベランダの厚いカーテンを引くと
太陽の陽が白いカーテンをオレンジ色に染めている。
ガラス戸を開けると冷たい風が飛び込んできた。
青い空の下、戸建ての白壁に朱、緑、オレンジ、黒、紺、色とりどりの屋根が
隙間なく重なり合い、遠くに濃い緑の山並みが霞んで見える。
「おー寒むー」とガラス戸を閉じ、再度ベッドに潜り込んだ。

* 目覚ましのラジオが6時の時報を告げ、
邦楽だの洋楽だのが週ごとに変わり、演奏と解説が流れる。
時にうるさく感じることもあるが、長年、目覚めたばかりのひと時うつろに聞いている。
6時55分、気象情報。気象予報士 伊藤みゆきさんの明るい声が、
その日その時の真新しい気象情報を分かりやすく歯切れの良い語り口で伝えてくれる。
これぞプロフェッショナルと思いながら聞き入る。痛む右腕を摩りながら・・・

* 7時、TVのリモコンを押すと真っ先に新型コロナウイルスニュース。
毎日毎朝ずーとこのニュースで始まる。
世界中に広がったコロナ禍、いつになったら収束するのか。
開催が1年延期されてきた東京五輪・パラ、
やるからにはあらゆる手を尽くして全責任を持ってやる必要がある・・ワクチン接種も含め。
尾見会長の言には説得力がある。

* 高齢者を優先して行うというワクチン接種、
当施設入居者全員がこの施設でまとまって受けることになった。
施設管理者側は 入居者個々人の意志確認を行い、身元引受人の同意を取り付け、
それから提携病院の医師に依頼するというプロセスを踏むのだが、
何せ医師の方がスケジュール調整出来ないくらい忙しいらしい。
5月末にやっとスケジュールが決まった、
この施設入居者は全115名なので、接種1日当たり3−40人とし、3日間かけて行われる。
1回目接種が6月29日から3日間、2回目は7月29日から3日間である。
なんとも遅い優先だなあと思う。横浜市は老人施設が多いし、
年寄りには 一人一人に時間が掛かるからなあ・・と思い直した。我慢、我慢。
  
* ベッドで妻が酸素吸入のチューブを鼻に付けてスヤスヤ眠っている。
右肺腺がんを手術して9年が経ち、今年、10年目に入った。
この間、6年目に脳へ転移し、腫瘍摘出手術とガンマーナイフで乗り切った。
手術担当の医師の手を妻は“ゴッド・ハンド”と呼んで感謝した。
そして、昨年5月、在宅酸素吸入が始まった。老々介護に自信が持てなくなった。
かといって 自分たち夫婦は息子たちの世話になる気はさらさらなかった。
しかし老人施設10数カ所のカタログを取り寄せてくれたり、
一緒に施設見学に出かけてくれたりしたのは息子たちだった。
  
* 結果として、ごく自然に目と鼻の先の“サ高住”の2人部屋を選んだ。
1年前に調べた時には 2人部屋の空きはなく、3組待ちの状況だった。
しかし今回、2階に2人部屋の空きが1部屋あった。
神様のお導き!と、即、決めた。15分で行ける同じ生活圏内。
引っ越しは楽だし、病院も教会も変わらなくて良いし、
この施設ならケアマネジャーや訪問看護師なども 今までと変わりなく継続することが出来る。
必要ならこの施設の提携先病院に移り、この施設で新たにケアマネジャーを選び、
必要な介護保険適用のメニューを選択すれば良い。
今の家は当面そのままにしておく。自分たちに最適な選択が出来る。

* 入居に関わる形態は賃貸アパートと同じだ。高額な一時金は不要。
入居時に敷金2ケ月分を前納するだけ。
毎月の家賃、生活サービス基本料、レストランで食べた分の食事代、自分の軽自動車の駐車料。
その他、各自が費やしたものは各自が払う。
即ち、自炊などの食費、光熱費としての水道代、電気代
(この施設での熱源は全て電気。ガスは一切使わない)、電話などの通信料、TV、新聞代、
交通費、その他生活維持に必要な諸々の費用。一番の出費は医療費と薬代。
  
* 7時30分、館内放送が呼びかける。「おはようございます。
レストランの朝食をご利用の方は 必ずマスクを付けてお越しください。
新型コロナウイルス感染予防のため 皆様のご協力をお願いします」。
自室で自炊する人が意外に多いが、レストランを利用する者は
「3密」を避けるため2組に分かれ、時間をずらして食事することになった。
自分たちは8時30分からの組になった。
あと1時間したらレストランまで 妻を車椅子で運ぶ。それまでに洗濯を終えることにした。

* 食事のメニューは 1週間ごとに栄養士から配られる。
今日の朝食は人気のパン食、ナゲットなどの副菜1品、サラダ、スープ、ホットミルク、
フルーツ、コーヒー。幸せー!

昼食は 2種類の主菜から1品を選択する。基本的には肉か魚か、
時には うどんかごはんかの時もある。
特記すべきは、魚の骨に出会ったことがない・・ かれい、たい、たら等の煮付けやムニエルに。
不思議。老人向けなのだ。骨ごと出るのは “ししゃも”、“しらす和え”・・それに・・
“あじフライの尻尾・・これ骨?”

* 毎日、朝と昼の2度、検温がある。
朝食を済ませて部屋に戻ろうとする頃、9時になると館内放送がある。
「コロナウイルス感染予防のため、これから検温を行います。
職員が順次部屋に伺いますのでご協力お願いします。
ご自身での検温が終わっておられる方は その旨職員にお知らせください」。
しばらくすると ピンポーンと玄関で鳴って、扉を開けると
いきなり 拳銃のような形をした検温器をかざされる。
それから、検温された自分は その拳銃を受け取って、奥に居る妻を検温して、
その拳銃を職員に返す。
最近では自動検温器が設置されて 要所要所に立ててあるので、
これに近づいていつでも 検温できるようになっている。
  
* 施設の“お楽しみ番組”と言えば、
カラオケ、お絵かき教室、麻雀、碁、将棋、映画鑑賞などなど、
この施設でもやっていたらしいが、コロナ禍の現在、全て行っていない。
唯一、続けているのが月に1回“美食会”と称して
特定の日の昼食を、普段より値段を高くして・・大抵800円・・特別料理を提供してくれる。
確かに年寄りの楽しみの一つは食べることではある。
この5月の子供の日の昼食メニュー。
たけのこご飯、エビフライ盛り合せ、キャベツのおかか和え、そら豆、汁物、フルーツ。
まるで子供向けみたいだけれど、職員が作った折り紙の小さな鯉のぼりが エビに立ててあった。
うまかったー。楽しかったよ。

* 施設に居ると 外出することは 楽しみではあるが おっくうでもある。
だから楽に外出できるように スーパー、ホームセンター、区役所、JR駅へ
マイクロバスで 出かける時間割が用意されている。しかし、今は不要不急の外出自粛。
病院へ行くのは必要な外出・・・でも、楽しみな外出ではないよね。

* 外出がおっくうな者や 何らかの事情があって外出できない者にとって
とても便利で有り難いと思うことがある。週に3回、訪問販売車がやってくる。
手造りパン屋さん、大手コンビニ店、青果市場が店を開く。館内放送でアナウンスされる。
「手作りパン屋さんが到着しました。
必ずマスクを付けてお出でください」アナウンスがなくても 開店時間が近くなると、
待ち遠しくて仕方なかったお年寄り達が 整然と行列して順番を待つ。
競い合って怪我でもしたら大変だから、職員が付きそう。
皆んな買い物を楽しんでいる。

この他、理・美容室が月2回開店する。自分たち夫婦はこれを利用している。
その他、クリーニング店が週1回、洗濯物を引き取り、届けてくれる。
なんとも便利なことではある。

* コロナウイルス感染対策が全国的に厳しく言われるようになって、
あちこちで“オンライン”が行われるようになった。
自分たちの施設でも、全国同系列の施設のうち 20施設ほどをオンラインで結んで
クイズ大会が企画された。各施設代表3名の一人に 自分が参加する機会を与えられた。
優勝は逃したが最後まで善戦した。老人施設にしては 進んだ取り組み方だと思う。
施設のスタッフたちは 殆どが20代から30代。いろいろ工夫、努力してくれている。
楽しかった。感謝。
  
* もう一つ、この施設での大きな楽しみがある。
それは風呂。サウナ付きの大浴場、小浴場の二つがある。ラジウム温泉。
大浴場には10〜12人位、小浴場でも5〜6人が ゆうゆう一緒に入ることが出来る。
男女が1週間ごとに 交代で大浴場と小浴場を使う。

しかし、今はコロナ感染予防のため 一度に入る人数を半数以下に制限している。
サウナは一度に4〜5人かなあ? でも、サウナがあるなんて、すごくない? 
自室にも風呂はあるが 浴槽の湯の沸かし返しが出来ない。
蛇口から注ぐ湯は 時間が経つと冷めてしまう。シャワー派は別としても、
湯船にゆったり浸かって 疲れを癒やしたいと思う者には 自室の風呂は無用の長物。
この施設で唯一残念に思うことではある。

* 湯上がりのビールの季節がそろそろ始まる。
レストランのアルコール・メニューは、ビール中瓶・小瓶、清酒。
でも、飲んでいるのを見かけたのは 今までにたった1回だけ。
皆んな部屋で飲んでいるのかなあ? 自分も部屋に焼酎やウイスキー、ワインなどを
用意してはいるが、薬のお世話になっている身、飲むのはストップしている。
そもそも 年取ってからそんなに飲めなくなった。
飲むのは年寄りの楽しみではなくなったかな? そんなことないネ。たしなみたいネ。
  
* アロマテラピー。これは個人的な楽しみで、今、凝っている。
義弟の妻が 某大手カルチャースクールで 人気のアロマテラピー講座の講師を長年勤めていた。
その義妹が 贈り物としてアロマのすごーくいい香りに調合したものを送ってくれた。
その香り、何とも言葉では説明しがたいが、すごーく爽やかなユーカリの森の香、
少し甘ったるいローズの花園の香、この2つが基調。
スプレー付きの小瓶にエタノールを入れ、4種類のエッセンシャルオイルを数滴ずつたらし、
精製水を適量加えて、よーく振って混ぜ合わせると出来上がり。
部屋の空間に向かって一吹きすると何とも言えぬリフレッシュされた気分になる。
朝に昼に、疲れを感じたときに、気分転換する。加齢臭も吹っ飛ぶ。

* 個人的な楽しみ方を見つけた。
施設の談話室の本棚には 興味をそそられる書籍や 映画のDVDやVIDEOが数多く並んでいる。
先ずはDVDの映画を片っ端から見てやろうと早速手を付けた。
好きな時間に 好きなものを借りて自室に持ち帰り、家事や介護の合間に観るので
時々完全にストップし翌日に持ち越すことも、時には休憩しコーヒーを炒れて、
時には居眠りしながら楽しむ。過去に見たことのあるものもないものも、
余りにも沢山次々と見たので、そのタイトルを覚えていない。
大脱走、ローマの休日、聖衣、椿姫、聖書の世界、創世記、
ジョン・ウエインのウエスタンもの、第二次大戦ナチス・ドイツもの、
ヨーロッパ戦線の喜劇もの。いずれも名作ばかり。邦画はこれから。

* 古ーいヴィデオ・デッキがダメになっていた。この施設に入る前に、テープ・デッキのテープがジャムって使えなくなり、デイスクの方しか使えなくなった。修理に出すより買い換えた方が良いかもと考えたが、取りあえず、PCでDVDを観ることにした。この話を聞いた息子は自分が使っている、これまた古ーいデッキを持ってきてくれた。当分はこれで間に合う。

* 映画を楽しんでいること聞いて、学生寮時代の友人が親切にも、
先頃BSで放映していた“サンテイアゴ巡礼の道”を録画して送ってくれた。
ところが、息子にもらった古―いデッキでは映らない。PCでも映らない。
友人に電話して聞いた。彼は自分で録画したものをしっかり再生して
確かめた上で送ってくれていた。話しているうちにようやく分かった。
彼のデッキはブルーレイだった。
  
* PCがダメになっていた。本来のMicrosoftメールソフトでの受発信が出来なくなって、
Webメールで凌いでいた。Widows8.1だったので、いずれ買い換えようとは思っていたが、
パソコン・ショップへ行く時間が取れなくて、ダメなPCをだましだまし使っていた。
安嶋さんから電話をもらった時、この悩みを、愚痴を、一方的に大っきな声で
くどくどと話したものだから、彼も応答に困惑してしまったことと思う。
お許しいただきたい。大きな声になったのは、何を隠そう、耳が遠くなったからだよ。

* とうとう息子に頼んで、予算20万から25万の間で、メーカーを問わない条件で、
PC NOTEBOOKを買ってきてもらうことにした。
しばらく経ってから息子は新品を用意万端整えて持ってきてくれた・・領収書を添えて。

森寺さーん、Fujitsu LIFEBOOKだよ! これまで歴代NOTEBOOKしか使ったことがない。
IBM、SONY、そしてTOSHIBAを2台続けて・・この2台目がダメになっていた。
そしてFujitsuになった。
それにしても“10”は使いづらい・・と言うか、老頭の働きが鈍くて、
なかなか新しいことが覚えられない。
先行き短いけれど、少しずつ・・・ゆっくり楽しんでみっか!
  
PCを新しくしたところで、今回はこの辺りで新生活の報告を一旦終了することにします。
読んでいただいて有り難うございました。

これからもその時々のこと、人々との触れ合いのことなど、折を見て綴ってみようと思います。
ではまた。

山爺拝 2021/6/13



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