山本夫人 亡くなる


MUZMUZ 15  山本順メールより  2021/12/10






21/12/16 田嶋より転送



『その時』は、或る日、突然やってきたわけではない。
ゆっくりと、静かに、本当に少しずつ、時には忘れてしまいたいほどの時を経て、忍び寄ってきた。

遡ればおよそ10年前、妻に肺がんが見つかった。
この時、『その時』がいずれはやってくることを覚悟した筈である。
しかし、5年が経過して 『その時』が遠のいたかのような淡い希望を抱きかけたこともあった。が、
脳転移が判明し『その時』が大波のように高くうねった。

以降、大病院へ通い続けた。
かかりつけ医から「このままだと共倒れしてしまう」と云われて、この施設に入ることを決めた。
「そんなに簡単に死なせてたまるか、、、」。一年前のことである。

しかし、次第に病院に通う体力も失せ、8月、在宅医療の訪問医に委ねることになった。
そして一ヶ月経った。「もうそれ程長くはないので近親者には知らせておかれるのがいいのでは」。
その日のうちに病者の塗油の秘跡を授かって、一週間も経たないうちに「あと2−3日」と告げられた。

9月24日20時頃、『その時』はやってきた。
誰にも邪魔されたくない。二人だけの最期の時間を静かに過ごしたいと心からそう思った。
よく頑張った。ありがとう。

初めて出会ってから・・・およそ60年間、与ってきた妻を主にお帰しした。

どうか全ての苦しみ悲しみから解放してください。
御国に迎え入れてください。
永遠の安らぎをお与えください。